御船千鶴子、高橋貞子 どのような呼吸法だったのか

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1910年(明治43年)頃に起こった千里眼事件では、超能力があると見れた 御船千鶴子、長尾郁子、高橋貞子らが、公開実験を行い、学者同士が真偽を巡り争い、大きな騒動となりました。

公開実験では、全てを透視で言い当てることはできず、当たるものもあれば、外れるものもあり、確率の問題になります。

それに加え、実験自体に、どこか疑いが持たれる部分があり、それを完全に排除できないため、反対する学者は、そこに目を付けます。

一方で、透視などの能力を発揮するためには、高い集中力が求められるようです。高い集中力を保つことと、疑いを持たれない実験との兼ね合いの難しさが伺えます。

それでも、御船千鶴子については、千里眼として知られるだけの話が、いくつか残されています。それが、常陸丸事件における第六師団の安否、そして、万田坑の話です。

それについては、前回、書いたのですが。どうしても、気になるのは、透視能力が身に付いたという話、特に、呼吸法についてです。御船千鶴子と高橋貞子については、呼吸についての話があります。

御船千鶴子は、義兄(姉の夫)清原猛雄から催眠術をかけられ、その状態で透視させ、常陸丸事件での第六師団の安否を言い当てたようです。

このやり方だと、御船千鶴子が透視したことに違いはないのですが、その御船千鶴子に催眠術をかける清原猛雄の存在は不可欠です。

清原猛雄は、御船千鶴子に催眠状態じゃなくても、透視ができるよう、呼吸法により修練を積ませたように見えます。

その方法は、詳しくは語られていないのですが。1時間に1度ずつ熱心に深呼吸を行うというもので、10日ほどで、庭の梅の幹の中にいる小虫が透視できたという話です。この時、肝心なのは、無我の状態になることのようです。

1時間に1度、特に『熱心な深呼吸』というものが、具体的に、どのようなものかは分からないのですが。何らかの呼吸法のようなものなのだと思います。

呼吸法により、無我の状態になり、透視できるようになったということは、もしかすると、透視にベストな状態は、催眠状態なのかもしれません。

もし、公開実験の際に、催眠状態で透視を行っていたら、結果は違っていたかもしれません。そのくらい、常陸丸事件での透視は、大きな出来事だと思います。

映画『リング』に登場する貞子のモデルと見られる 高橋貞子についても、夫の高橋宮二が独自の呼吸法を確立し、それを真似たことが切っ掛けで、透視や念写などの力が目覚めたと言われています。

高橋貞子が、能力に気づいた時期が、長尾郁子が初の念写実験を行った1910年です。この頃、夫と暮らしていた高橋貞子が住んでいたのは、今の東京都渋谷区千駄ヶ谷になります。

高橋宮二は、精神修養のために独自の呼吸法を研究し、それを周りの人へ教えていたという話もあるのですが、こちらも、どのような呼吸法だったを知ることはできませんでした。

ただ、1905年(明治38年)には、岡田虎二郎の『岡田式呼吸静坐法』があります。これは、1897年に創刊された経済雑誌『実業之日本』にも連載されていたものです。

この経済雑誌は、大日本実業学会が創刊し、その後、株式会社 實業之日本社が出版しています。『實業(じつぎょう)』は、『実業』の旧字です。

實業之日本社は、1909年(明治42年)に、雑誌について、日本の出版業界初の地方小売書店への委託販売制度を導入し、定められた期間内であれば、売れ残った雑誌が返品できるようにしています。

これが部数を伸ばす一因と見られ、大正初期には、大手出版元になっています。そのことからも、各地の書店に雑誌が並び、多くの人に読まれていた可能性があります。

岡田式静坐法については、その方法が残されています。大正時代には、一大ブームを巻き起こし、静坐会があちらこちらで開催され、正式に登録された会員だけでも、2万人はいたという話です。

やり方について、『岡田式静坐法』(12版 1912年)によると、文章が古いため、私なりに読んだ感じなのですが。

姿勢は、1.正座して、足の甲を重ねる。2.両ひざの間を少し開けて座る。3.背筋を伸ばす。4.両手を軽く握り、膝の上におく。5.顔は正面を向き、眼を閉じる。6.心境は、あらゆる邪念を捨て去り、無我の境地。

呼吸については、口を使わず、『必ず鼻よりすべし』とあります。鼻から息を吐く時は、緩くて長く、下腹部を意識し、自然に力が入るように。鼻から息を吸う時は、自然に短く。

細かな点があり、息を吸えば、胸にも空気が入り、わずかに下腹部も膨らむなどと書かれていています。『臍下(せいか 意味:へその下あたり)に気が満つる時、胸が虚となる』などとも書かれています。

イメージの仕方なのかもしれませんが、腹式呼吸の手順を気功などの気を交えながら、解説されています。吸う時と吐く時の間の状態についても書かれていて、そこが気になります。健全なる呼吸は、他人が見て分からないくらい静かとのことです。

昔の呼吸法だけに、無念無想で行うというものもあれば、雑念などを気にせずに、呼吸の仕方を心掛けるというものもあり、様々です。時が経つに連れて、呼吸法として、少しずつ変化したのかもしれません。

これは、健康法として考え出されたものではなく、もともとは、七情を整えることで、結果として、健康になるというもののようです。

七情は、儒教の話なのか、仏教の話なのかで、7つの中に数えられる感情に違いもあるんですが、感情を整えることが、重要という話になります。

無我の状態になるという部分は、御船千鶴子のところとも共通しています。昔の人だけに、正座が当たり前なのかもしれませんが、公開実験時の正座する姿とも重なり、近いものがあるような気がします。

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