緊張や不安、パニック発作が、なぜ、起こるかを分かりやすく説明し、脳の仕組みを利用することで、元の元気な状態に戻すというのが、クラウス・ベルンハルト 著『敏感すぎる あなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』という本です。
この本を読むと、パニック発作は、無意識からのメッセージや警告であることが分かり、自分のために起こっていることから、印象が変わります。
具体的には、やりたくないと思いながらも、やらざるを得ない場合、パニック発作が起これば、それをやらない理由になるというものです。やりたくないのに、やろうとすることが、どれほど大きなストレスになっているかが分かります。
脳の仕組みとして、ポジティブに考えるよりも、ネガティブに考えやすいという話もあり。ネガティブに考えることが習慣になっていると、脳は働き続けるものなため、ふとした空いた時間には、アクセスしやすいネガティブなことを考えてしまうというのも、理解できます。
パニック状態を起こらなくするためには、脳の仕組みを理解し、それを踏まえて、ポジティブ思考になるよう、考え方をプログラミングし直すというのが、この本のやり方です。
この本を読むことで、脳の考え方にクセやパターンがあり、コツさえ掴めば、ネガティブ思考をポジティブ思考に変えることは、そう難しくないことが分かります。
やり方としては、自己暗示のようなものですが。この本は、脳の仕組みを理解した上で行うため、一般的な自己暗示の本よりも、細かいテクニックが書かれています。
否定形の文章を例に出しながら、考えないことを考えることができないという話は興味深く。実際に、自分でやってみて、納得できました。
人は、脳の一部しか利用していないと、昔、よく聞いた記憶があるのですが。無意識が脳の多くを利用し、1秒間に8万以上の情報を処理できるという話もあります。
著者は、ドイツの臨床心理士であり、科学・医療ジャーナリストとしても活躍し、現在は、不安症やパニック発作の専門家として、ベルリンでカウンセリングルームを開設。最新の脳科学に基づいた画期的療法『ベルンハルト・メソッド』が、ドイツで注目を集め、この本は、大ベストセラーになっています。
この本は、はっきりした書き方で曖昧さがなく、科学的な情報を扱うため、言葉に説得力があります。ジャーナリストな書き方なのかもしれませんが、専門医が書いたという本よりも、ジャンルを問わずに広く書かれており、分かりやすさもありました。
著者の文章からも、一般的に精神科医は、薬が必要な場合もあるとしながらも、薬による治療に頼りがちなのが分かります。
これが、うつ病になった友人や叔父の話とも重なり、『医は算術なり』(医師が利益を優先し、患者をただの数字やお金儲けの手段として扱うこと)という言葉を思い出します。